訪問看護でできること?できないこと!

2023年2月24日

訪問看護の業務は、実際に携わったことのある看護師さん以外はなかなか想像がつかないことが多いですね。 今回は、実際の業務の概要から訪問看護だからできる看護介入、訪問看護でできないことまで、詳しくご紹介して行きたいと思います。 これから訪問看護にチャレンジしたい看護師さんや、訪問看護に初めて就職する看護師さんはぜひ参考にしてください。

Contents

訪問看護とは??

「病気や障がいがあっても、住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」と望まれる方が増えています。

 

でも「家族だけで介護や医療的ケアができるだろうか」「一人暮らしだけど大丈夫?」と不安に思う方もおられることでしょう。そんな時、訪問看護師は在宅ケアサービス提供者の一員として在宅療養を支えます。

 

訪問看護の強みは、地域で暮らす赤ちゃんから高齢者まで全ての年代の方に、関係職種と協力しあって、一人ひとりに必要な支援が行えるところです。

 

このページでは、訪問看護ではどんな支援をするのか、利用したい時に誰に相談すれば良いのか、訪問看護の回数や時間、費用などについて具体的に紹介しています。

 

医療関係者や福祉関係者の皆様にも、訪問看護について知っていただき、住み慣れた地域で障がいや病気があっても暮らし続けたいと願う方々を共に支援していきたいと思っています。

 

Q1  訪問看護は、どんなサービス

訪問看護とは、看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携により行う看護 (療養上の世話又は必要な診療の補助)です。

 

病気や障がいがあっても、医療機器を使用しながらでも、居宅で最期まで暮らせるよう に多職種と協働しながら療養生活を支援します。

 

Q2  訪問看護は、どんな看護をしてくれる

主治医と密に連携し、心身の状態に応じて以下のような看護を行います。

 

身体的・精神的な看護はもとより、入退院(入所・退所)についてのご相談、必要に応じた在宅ケアサービスの紹介、関連機関との連携などにより、

 

利用者様のご希望に沿った療養生活を 叶えるための様々な支援や調整を行います。

 

  • 健康状態のアセスメント
  • 日常生活の支援
  • 心理的な支援
  • 家族等介護者の相談・助言
  • 医療的ケア
  • 病状悪化の防止(予防的看護)
  • 入退院時の支援
  • 社会資源の活用支援
  • 認知症者の看護
  • 精神障がい者の看護
  • リハビリテーション看護
  • 重症心身障がい児者の看護
  • エンドオブライフケア など
  •  

■健康状態のアセスメント

  • 全身の健康状態(体温、呼吸、脈拍、血圧、体重、筋力、視力、聴力、皮膚の状態、意欲、意思疎通、認知・精神状態、睡眠、栄養状態、排泄状況等)のアセスメント
  • 病状や障がいのアセスメント
  • 日常生活に影響を及ぼす要因のアセスメント
  •  

■日常生活の支援

  • 清潔ケア(清拭、入浴介助等)
  • 栄養管理及びケア(食事摂取への支援、脱水予防等)
  • 排泄管理及びケア(排泄の自立支援、ストーマ管理、適切なおむつ使用等)
  • 療養環境の整備(適切な福祉用具の使用等)
  • コミュニケーションの支援
  •  

■心理的な支援

  • 精神・心理状態の安定化のケア
  • 睡眠等日常生活リズムの調整
  • リラックスのためのケア
  • 希望や思いを尊重した生活目標に沿った支援(生きがい、家族や隣人とのつながりなど)
  • 家族や関係職種間の人間関係の調整
  • 利用者の思いの尊重、尊厳の維持
  • 利用者の権利擁護(代弁者(アドボカシー)
  •  

■家族等介護者の相談・支援

  • 介護・看護負担に関する相談
  • 健康管理、日常生活に関する相談
  • 精神的支援
  • 患者会、家族会、相談窓口の紹介
  •  

■医療的ケア

  • 医師の指示に基づく医行為(点滴注射、褥瘡・創傷処置等)
  • 医療機器や器具使用者のケア(経管栄養法管理、様々な留置カテーテルの管理、在宅酸素療法管理、吸引、人工呼吸器使用上の管理等)
  • 疼痛、血糖コントロール、脱水等の症状マネジメントと医師等への情報提供
  • 服薬管理
  • 急変、急性増悪等による緊急時対応(24時間体制)
  • その他、主治医の指示による処置・検査等
  •  

■病状悪化の防止(予防的看護)

  • 褥瘡・拘縮・肺炎・低栄養等の予防、健康維持・悪化防止の支援
  • 寝たきり予防のためのケア
  •  

■入院(入所)退院(退所)時の支援

  • 退院(退所)時の連携(医療処置・ケアの引継ぎ、在宅医療・看護体制整備)
  • 入院(入所)時の連携(在宅での医療処置・ケア等の引継ぎ等)
  • 相談支援専門員(障害福祉)、ケアマネジャー(介護保険)等関係者間との連携
  • 入院病院、入所施設、関係機関等との連携
  •  

■認知症者の看護

  • 中核症状、BPSD(認知症の行動・心理症状)に対する看護
  • 睡眠、食事等生活リズムの調整
  • コミュニケーションの支援
  • 家族等介護者支援
  • 環境整備、事故防止のケア
  •  

■精神障がい者の看護

  • 精神症状に対する看護
  • 睡眠、食事等生活リズムの調整
  • コミュニケーションの支援
  • 掃除、洗濯、買い物、料理、金銭管理等日常生活の自立支援
  • 服薬、デイケア、外来通院等医療の継続支援
  • 就労等、社会生活復帰への支援
  •  

■エンドオブライフケア

  • 全人的疼痛、苦痛等の緩和ケア
  • 食事・排泄・睡眠・休息運動等療養生活の支援
  • 療養環境の調整
  • 看取りの体制への相談・アドバイス
  • 本人・家族の精神的支援
  • 遺族へのグリーフケア
  •  

■リハビリテーション看護

  • 体位変換、ポジショニング、関節可動域訓練等の実施と指導
  • ADL・IADLの維持・向上のための訓練
  • 福祉用具(ベッド・ポータブルトイレ・車椅子・自助具等)の利用支援
  • 外出・レクリエーションの支援
  • 生活の自立・社会復帰への支援
  •  

■重症心身障がい児者・医療的ケア児の看護

  • 医療機器や器具使用者のケア(様々な留置カテーテル管理、吸引、経管栄養法管理、気管カニューレ・人工呼吸器使用上の管理等)
  • 発達過程・障がいに応じた看護、生活リズムの調整
  • 家族支援
  • 社会資源(公費負担医療、各種手帳、医療費助成等)の活用支援
  • 療育・教育機関との連携
  • その他主治医の指示に基づく医療処置
  •  

■社会資源の活用支援自治体の在宅ケアサービスや保健・福祉サービスの紹介

    • 民間や関連機関の在宅ケアサービスの紹介
    • ボランティアサービスの紹介
    • 各種サービス提供機関との連絡・調整
    • 住宅改修、福祉用具導入等の相談助言
    • 公費負担医療制度、医療費助成制度等の活用支援

 

Q3  どんな人が訪問看護を、受けられるか

疾病や障がいなどがあり、居宅で療養をしながら生活をされている方で、主治医が訪問看護を必要と認めた方です。

 

小児から高齢者まで、年齢等を問わず訪問看護を必要とする全ての方を対象とします。

 

ご本人だけでなく、ご家族の介護相談や健康相談にも応じます。

要支援者または要介護者は、原則、介護保険が適用されます。

 

ただし、要支援者または要介護者であっても、がん末期等厚生労働大臣が定める疾病等の方、急性増悪による頻回な訪問が必要な方、精神科訪問看護の対象者は医療保険の適用となります。

 

訪問看護でできることとは?

まずは訪問看護でできることについて解説していきます。

 

訪問看護は、看護師が利用者さん宅に伺い看護を提供しています。

 

看護を提供するにあたり病院や施設とは環境が異なりますが、具体的にはどのような違いや特徴があるのでしょうか。

 

訪問看護と病院や施設でできることの違い

訪問看護と病院、施設での看護の違いは、実はそんなにありません

 

医療的ケアや観察項目、留意点や疾患におけるリスクは病院や施設と同じです。

 

では、訪問看護と病院、施設で異なる点はどのようなものがあるでしょうか。

 

大きく違う点は3つあります。

 

1.療養する環境が人それぞれ異なる

2.医師や看護師が常に近くにいることができない

3.利用者さんの自己管理や家族介護がメインとなる

 

実際に提供する看護は大きく変わらないのに、上記の3つが加わるだけで訪問看護を別世界のように感じてしまう看護師さんは少なくありません。

 

訪問看護のメリット

●医療従事者による専門的なケアが受けられる

訪問看護サービスを行うのは、看護師、准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった、資格を持った医療従事者です。

・点滴や胃ろうチューブの管理が必要……看護師
・歩行障害があり、リハビリが必要……理学療法士
・脳卒中の後遺症で上手く発音できず、リハビリが必要……言語聴覚士
というように、利用者の病状や健康状態に合った専門的なケアを、自宅で受けることができます。

 

●通院の負担が減る

高齢だったり傷病・障害があったりすると、病院に通うのが難しいことがあります。

訪問看護を活用すると、医師でなくても可能な医療処置(消毒・点滴など)やリハビリテーションは自宅で受けることができるため、通院の負担を最小限に抑えることができます。

 

●退院後、スムーズに自宅療養へ移行できる

入院によって病状がある程度回復し、退院しても傷口の消毒やたん吸引、医療器具の管理といったケアを、本人や家族がしなければならず、「上手く処置できるか不安……」という場合があります。

 

また、自宅内の移動や食事、トイレといった生活も「健康なときと同じようにはいかないのでは……」と心配になることもあります。

 

訪問看護を活用すると、自宅で看護師の指導や補助を受けることができるので、安心してスムーズに自宅療養を始めることができます。

 

●家族の負担が軽くなる

家族看護や在宅介護を行っている家族には、肉体的にも精神的にも、さまざまな負担が生じます。

 

また、外出が制限されるという問題や、「家族が病気や怪我をしたらどうすれば……」という心配もあるかもしれません。

 

訪問看護を活用すると、自宅での看護・介護に伴うケアを看護師などと分担できるので、家族の負担を減らすことができます。

 

普段から看護師などのサポート体制があると、家族が急な病気や用事のときも対応しやすくなります。

 

●QOLの向上につながる

訪問看護は、自宅で充実した療養生活や介護生活を送れるようサポートします。

 

そのため、「できるだけ自宅で過ごしたい」という方の気持ちを尊重することができ、QOL(生活の質)の向上につながります。

 

訪問看護でできないこととは?

前項では、訪問看護で行うことができる業務は病院や施設と大きな差はないとお伝えしました。

 

では、訪問看護でできないこととはどのようなものでしょうか。

 

訪問看護でできないことについては、具体的には以下のようなものがあります。

 

・利用者さんの居宅以外での訪問看護の提供

・買い物や調理などの家事

・受診同行(自費で行う事業所もあります)

 

このように、訪問看護でもできない業務は存在します。

 

上記のような支援が必要な場合には、担当のケアマネジャーに情報共有し、適切なサービスに繋いでいただくのが妥当と言えます。

 

訪問看護できないこと5選

●掃除や買い物といった日常生活のサポートは受けられない

訪問看護は自宅療養や在宅介護に伴う「療養ケア」を行うサービスなので、掃除、買い物、洗濯といった日常生活のサポートは含まれません。

 

それらが必要な場合は、ヘルパーなどのサービスを活用する必要があります。

 

●利用開始までに日数がかかることがある

介護保険で訪問看護を利用する場合、ケアプランの作成やサービス提供者の決定といった手続きが必要です。

 

また、要介護認定がまだの場合は、申請が通るまでに1ヶ月近くかかることもあります。

そのため、「退院後に訪問看護を利用したい」と考えている場合などは、早めに手続きを始めることが大切です。

 

●介護保険の訪問看護は、支給限度額に上限がある

介護保険で訪問看護を利用する場合、自己負担は利用額の原則1割ですが、要介護度ごとに支給限度額が設けられています。

 

訪問看護のほかにヘルパーなどの介護サービスも利用する場合は、それらを合わせて計算します。支給限度額を超える部分については全額自己負担となります。

 

●事業所によっては土日祝、夜間が休み

訪問看護を行うのは、訪問看護の体制を設けた病院や診療所か、訪問看護ステーションなどのサービス事業所です。

 

その全てが24時間・365日対応可能とは限りません。

 

病院や事業所によっては、土日祝が休みだったり、サービス提供時間に制限があったりすることがあるので、事前によく確認することが大切です。